【鴨長明】ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。

2014年5月14日
イラスト:nihhiイラスト:nihhi

今回は年の瀬にふさわしい一文を選んでみました。言わずと知れた『方丈記』の冒頭部分ですね。中高の古典の授業などで、「仏教的無常観」のあらわれた名文として習った方も多いのではないでしょうか。私も、暗記するまで繰り返し音読させられた記憶があります……。

ゆく川の流れは絶えることがなく、その上、もとの水であることはない。月日もかならず過ぎ去ってゆき、一日として同じ日が再び巡ってくることはない。

あらゆるものは流れ去っていく……。なんだかしんみりとしてしまいますが、しかし、よくよくこの文章を味わってみると、「流れ去るもの」の背後に、「流れ去ることのないもの」の姿が浮かびあがってくるような気がするのですが、いかがでしょうか。

ゆく川の「流れ」は決して絶えることはありません。時間を止めることは不可能です。しかし、その「流れ」の舞台となる「川」自体は、いつ何時だって、“いまここ”に、“いまここ”そのものとして、寸分も変わることなく、あり続けるのです。

どうしても年末はばたばたとしてしまうものですが、そんなあわただしい空気の中にこそ、「川」そのものを見出す機縁は、潜んでいるのかもしれませんね。

みなさま、どうか、よいお年を。

「ほぼ週刊彼岸寺門前だより」2015年12月27日発行号より転載)