今回は明治から昭和にかけて活躍された仏教学者・鈴木大拙さんのことばを選びました。「ひじ外に曲がらず」……これだけ聞いても、頭の中はハテナマークでいっぱいになるだけですよね(笑) しかし、鈴木大拙さんはこのことばに触れた瞬間、「ほんとうの自由」をさとられたのだそうです。
私たち人間のひじは、確かに内側に曲がるばかりで、外側には曲がりません。それは、人間という存在が生まれ持った制限です。しかし、ひじの可動域に代表される「絶対的な制限」(=「不自由」)を完全に受け入れたところにこそ、「自由」が広がっているのだ、と鈴木大拙さんはおっしゃいます。
外側に曲がらない肘をどうにか曲げようとするところに抵抗が生まれます。その抵抗こそが、仏教で言う「苦」です。しかし、曲がらない肘を受けいれ、それをいかに使っていくかは、完全に自由です。
「すでにそうなっているもの」に対する抵抗の有り無しが、不自由を生きるか、自由を生きるかを決めるのかもしれませんね。
自由を生きていきましょう。
(「ほぼ週刊彼岸寺門前だより」2016年6月5日発行号より転載)