【沢庵】物一目見て、その心を止めぬを不動と申し候

2014年5月14日
イラスト:nihhiイラスト:nihhi

沢庵(たくあん)さんは、安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍された、臨済宗のお坊さんです。今回のことばは、沢庵さんが、不動明王の智慧について解説された書物から抜粋しました。「物を見ても、それに心を止めないことこそを不動という」。「止めない」=「動いている」ことこそが「動かない」ことである……。いったいどういうことなのでしょうか。

ところで、少し話は変わりますが、最近、私は、ある自然療法の先生に身体を調えていただいたのですが、その際にこんなお話をお伺いしました。「身体の中を新鮮なものがぐるぐると巡っている状態を健康と呼びます。一方、身体の中の巡りが悪くなってしまっている状態を不健康と呼びます」……。

先生がおっしゃっていたのは、血液とか、栄養とか、そういったもののお話だったと思うのですが、これってきっと、いろんなところでも言えますよね。思考でも、感情でも、身体感覚でも……さまざまなものがきちんと「巡っている」=「動いている」状態で安定している。つまり、「動いている」ということが「動かない」(=不安定でない)状態であれば、人間は心身ともに健やかでいられる、という意味なのでしょう。

なんらかの事物に触れて、心が動くこと。それは人間としては至極まっとうなことです。心の動きを止めてしまえば「不動心」が手に入るわけではない。むしろ、いつ何時だって心がどうしようもなく動き続けていくさまを、ただただそのままの大きさで受け止め続け、そして流し続けていく心こそを、「不動心」と呼ぶのだろうな、と……。

折に触れて思い出したいことばだな、と思います。

「ほぼ週刊彼岸寺門前だより」2016年8月28日発行号より転載)