この世界にあなたは関わっているの。どうしようもなく、関わっているのよ。

2014年5月18日

女子中学生のニコ(演:大後寿々花)は、友達になった殺し屋の三日坊主(演:中村獅童)を説得し、彼が、実は裏社会にも通じる骨董屋の女主人・マキ(演:浅丘ルリ子)を殺すのを、間一髪で阻止する。しかし、そのために三日坊主は殺し屋の組織から抹殺されてしまう。友達の死を知らされたニコはマキに詰め寄る。「もし、あたしに会わなければ、三日坊主はまだ生きていたかもしれないってことですか? もしあたしがテレクラに電話しなかったら、もしあの箱を拾わなかったら、もしあの角を曲がらなかったら、三日坊主はまだ生きていた……? だとしたら……あたしのせいだ……」愕然とするニコに、マキが厳しくも言い放つ。「そうよ。あなたのせいよ。」はっと顔を上げるニコに、マキは続ける。「だってあなた一人で生きているんじゃないもん。この世界にあなたは関わっているの。どうしようもなく、関わっているのよ。」

(『セクシーボイスアンドロボ』日本テレビ・2007年)

 

 

 

ありがたいご縁に導かれ、今春からハフィントンポストという大きな媒体で、ほぼ週一でブログ記事を書かせていただいている。しかも、実名、顔写真付きで。ここ2~3年、ほとんどネットの世界と無縁の生活を送っていた私が、突如として、不特定多数の人々の前に、武器にもならない未熟な文章ひとつ携えて、つまりほぼ丸腰とも呼ぶべき状態で、「エラヤチャエラヤチャ」と躍り出ることとなったのだ。なんとありがたいことだろう、南無読者仏南無読者仏南無編集者仏南無読者仏、ぶつぶつぶつ……などと念仏を唱えながら全方位に向けて手を合わせて頭を下げてまわりたくなるような、とても言葉にはできないほどの感謝の気持ちがある反面、恐くて怖くて逃げだしたくなるような気分も、また、しっかりと味わっている。

 

最初の記事をアップしていただいてからほぼ一週間、私の気分はジェットコースター並みの乱高下を見せ、泣いたり笑ったり怒ったりまた泣いたり、泣いたり、泣いたり……とにかく「不安定」の一言に尽きるような状態で、周囲の人々には随分とご迷惑をおかけした。先日アップしていただいたのが4回目の記事となるのだが、いまだにこの緊張感に慣れることはない。慣れることなんかあるのだろうか。慣れたらいけないんじゃないだろうか、とも思う。

 

文章をもって不特定多数の人々に自分の考えを表明するというのは恐ろしい作業だ。うれしい感想をいただくこともある一方、多数の反論もいただくし、私の未熟な文章そのものに対する批判だってたくさんいただく。毎日毎日、びくびくしながらそれを目にしている。書きたいことは心の中ではものすごくくっきりしているのに、技術がまったく追い付いておらず、ぼやっとした的外れな表現しかできないことに、自分自身、毎日毎日苛立っている。はっきり言って、泣きたくなるようなことだらけだ。それでも、文章を書くことには、そしてそれを誰かに読んでいただくということには、何事にも代えがたいようなよろこびがある。だってそれは、この取るに足らない私というちっぽけな人間が、それでもどうしようもなくこの世界に影響を与えているのだと知る、大きな手がかりとなるからだ。不遜なことを言いたいわけではない。私だけではない。生きとし生けるもの、みな必ず、この世界に、どうしようもなく、影響を与えているのだ。どうしようもなく、組み込まれているのだ。どうしようもなく、関わっているのだ。「すべて縁によって生じ、縁によって滅びる」とは仏陀の言葉だが、この世に存在している限り、縁の網目からとりこぼされることなど、決してないのだ。

 

自分が生きて、息をしているだけで、自分の想像もつかないようなどこかの誰かに、想像もつかないような影響を与えている。大なり小なり、必ず、影響を与えているのだ。それは考えれば考えるほど恐ろしいことではある。しかし、そこにしかないよろこびというものだって、また、確実に存在しているのだ。そのよろこびは、言ってみれば、「生」のよろこび、そのものだ。

 

書いても書かなくても、生きているだけで、ただ存在しているだけで、この世界に、どうしようもなく関わっている。だけど、そのことを知るためには、私は書かなくてはいけないのだ。逆説的であることは十分に理解している。だけど、そうでもしなければ気が済まないのだ。厄介な話ではある。業というやつだろうか。それとも、これも、縁に導かれてのことなのだろうか。

 

ご縁がある限り、私は、びくびくしながらも、ひっそりこっそりなにかを書き散らかして生きていくのだろう。……ということで、ご縁があってこちらのサイトを覗いてくださった奇特な方々におかれましては、今後とも、末永いお付き合いを賜りますよう、心からのお願いを申し上げます。どうぞ、どうぞ、よろしくお願いいたします! と、図々しいお願いをしたところで所信(初心)表明演説終わり! お読みくださってありがとうございました。

 

ちーん。合掌。

 

二〇一四年五月一八日 小出遥子記