W杯と願望実現(その1)

2014年6月16日

日本中がサッカーで大盛り上がりであるが、ワールドカップと聞くと、私には、どうしたって思い浮かんでくる光景があるのだった。それは、頭に、白っぽく生臭いものを付着させて、予備校の教室の入り口に生気なく突っ立っていた、大学受験の浪人仲間・K村くんの、青白く、情けない表情である……。

 

「俺さ、サッカーのワールドカップの時期、必ずカラスにフンをぶつけられるんだよね……」

 

いまにも泣き出しそうになりながら、彼はそうつぶやいたのだった。「は? まさか! ていうか早く頭洗ってきなよ!」と友人数名で笑い飛ばすも、K村くんの地の底を這うようなテンションは変わらない。

 

「いや、本当なんだって……。94年……日本は出場できなかったけど、あの回が初めだったな……。あれはいつだっただろう、日にちまでは覚えていないけど……」

 

フンを頭にべっとりとくっつけたまま、遠い目をして、彼は述懐をはじめた。

 

「でも、とにかくワールドカップの開催期間中だったよ。班になって一列で登校してるとき、俺だけに当たったんだよね、カラスのフンが……。98年、ゴン中山フィーバーに日本中が沸いたその日にも、俺、テンション低かった。だってテレビを見つめる俺の頭には、白くて臭いものがくっついていたから……。で、2002年の、今日。コレ、ですよ……」

 

自分の頭を指差しながら、消え入りそうな声で彼は続けた。

 

「あのカラス、スナイパーだぜ……。ははは。ていうか、俺、呪われてるよな……」

 

声は笑っていたが、表情は硬く、暗いままだった。さすがにもう、誰もなにも言えなかった。予備校の窓の外には自国のユニフォームを着た外人さんがあふれていた。地元新潟でイングランドVSデンマークの試合が行われる日だった。

 

「フンをワックスにして、ベッカムヘアでも作るかな……」

 

彼の捨て身のギャグ(しかも不発だった)が、あれから12年経ったいまも脳裏にこびりついて離れない。

 

それから4年後。2006年。世界中がドイツに心を遊ばせている時節、すっかり疎遠となっていたK村くんから、突然メールが入った。本文はなし。頭に白いものをべっとりとくっつけた彼がぎこちなく微笑んでいる写真だけが添付されていた。

 

それ以降、K村くんからの連絡はない。K村くんの行方は誰も知らない……。

 

2010年、日本中が本田△と騒ぎ立てていた頃はどうだったのだろうか。そして、2014年。果たして今回は……。梅雨空を見上げては戦々恐々とする、御年31の、くたびれたスーツ姿の彼が、私にはありありと思い描けるのだが……。

 

 

 

これ、単なる気の毒な青年の物語じゃないんですよ……。私はこの話から、ヒントを得て、人生全般に応用できる、とある法則を見出しました……。それは……

 

「嫌だ嫌だと思い続けていると、その通りのことが起こり続ける」

 

逆に、

 

「好ましい出来事は、自分がそれを願っているのを忘れた頃にようやく起こる」

 

ってこと。

 

なぜそう言い切れるのか。それは……長くなりましたので明日に続きます!(またこれか!)

 

 

 

 

(その2に続きます)