『ぼくを探しに』

2014年12月21日

シルヴァスタインの『ぼくを探しに』という絵本を十数年ぶりに読みました。

 

最後のページに辿り着き、本を閉じた瞬間、一緒に読んでいた人が、

 

「これでいいのだ……。」

 

としみじみとつぶやいたのが印象的でした。

 

バカボンのパパじゃん!

 

 

 

 

物語は、1ピースだけ切り取った円形のピザのようなかたちをした主人公が、「何かが足りない それでぼくは楽しくない」と言って、「足りないかけらを探しに行く」ことから始まります。

 

「ぼく」のからだは欠けているので、あまりはやくは転がれません。

 

それで、「立ち止まってはみみずとお話」したり、道端に咲く花の香りを楽しんだり、「かぶとむしを追いこしたり」、「かぶとむしに追いこされたり」、「ちょうに立ち止まってもら」ったりしながら、「愉快」に進んでいきます。

 

そんなある日、「ぼく」はとうとう「ぼくにぴったり合いそうな」かけらを見つけます。

 

合わせてみたら……「はまったぞ ぴったりだ やった! ばんざい!」

 

「すっかりまるくなった」「ぼく」は、前よりもずっとはやくころがれるようになります。「こんなことははじめてだ!」とよろこぶ「ぼく」。

 

でも……。

 

「あんまり調子よくころがるので」、

 

「みみずとお話することも」、「花の香りをかぐことも」、「ちょうに立ち止まってもらうことも」、歌を歌うこともできなくなってしまいました。

 

そこで、「ぼく」は気づきます。

 

「なるほど つまりそういうわけだったのか」

 

「ぼく」はころがるのをやめて、「かけらをそっとおろし」、ふたたび「一人ゆっくりころがっていく」ことにしました。

 

最後のページには、「ぼく」のからだの欠けた部分に、うつくしい蝶がとまっている絵が描かれています。「ぼく」はなんだかとってもくつろいだような表情をしていました。

 

 

 

 

……と、まあ、こういうお話なのですが。(括弧内の引用はすべて シルヴァスタイン作/倉橋由美子訳 『ぼくを探しに』 講談社 より)

 

 

 

 

こういうのの解説って、もう、ものすご~く野暮なことだとは思うのですが、それは重々承知の上なのですが、ごめんなさい、あえてやらせていただくと、あれですよね、物語の前半と後半で、この主人公には、大規模な視点の転換が起きていますよね。

 

よく使われるたとえで言えば、

 

「ゲームの”キャラクター”としての視点」

 

から

 

「ゲームの”プレイヤー”としての視点」

 

に移っている。

 

 

 

 

なにかが足りない。その「なにか」さえ手に入れば、自分はしあわせになれるはず。

 

そう思って探求をはじめ、紆余曲折を経て、ようやくの思いで、その「なにか」を手に入れる。

 

でも、そこに自分が思っていたようなしあわせはなかった。

 

そこで、「なるほど つまりそういうわけだったのか」。(←ここで視点が転換したわけですね。)

 

手に入れた「なにか」を手放して、「ぼく」は「ぼく」のまま、そのままで生きていくことをはじめる。

 

そこにこそ、「ぼく」の求める満足はあった。

 

 

 

 

キャラクターとして生きているときは、完全にその役にはまりこんでしまっているから、「自分」というものが、そもそも完全に満たされた存在であることに気づきもしない。

 

でも、一度「それ」を味わうことさえできれば、それこそ、バカボンのパパの言う、

 

「これでいいのだ。」

 

の境地に達することができるのですね。

 

そうして、「自分」というものとすっかり仲直りして、いつだって満たされた状態で生きていくことができる。

 

そこに「深刻さ」は存在できません。

 

だって、「自分」は、ゲームのキャラクターではなく、それを楽しむプレイヤーなのだから。

 

欠けている(ように見える)部分もひっくるめて、そのキャラクターをあえて選択して、その視点から、この世界を生きる―― そんなゲームを楽しんでいる、その「なにか」こそが、実は、探し求めていた「本当の自分」だったのだ。

 

そのことを知ってしまえば、その人はもう最強ですね。

 

 

 

 

あなたの求める「あなた」は、実は、すでに「ここ」にいます。

 

 

 

 

 

まあ、それを心の底から「知る」ためには、まずは「ぼくを探しに」遠くに出かけて右往左往することも、実は必要だったりするのですけれどね。

 

「どこだどこだどこだどこだ」が極まって、はじめて、「ここだ」に辿り着くというか。

 

まあ、なんにせよ、「これでいいのだ。」ってことですね。

 

テキトーっぽいけど、真実だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

ものすごく有名な絵本ですが、機会があれば、みなさんもぜひ、『ぼくを探しに』、読み返してみてください。

 

たくさんの発見があるはずです。

 

オススメです。