【道元】放てば手に満てり

2014年5月14日
イラスト:nihhiイラスト:nihhi

先日、大切な友人から、こんなメールが届きました。

『ぎゅーっと握っていた手を開いたら、大事にしていた風船は、空高く飛んでいきました。真っ赤な手のひら。痛くて痛くて、涙が止まらなかった。でもね。いま、同じ手のひらには、とても大事なものが載っているの。こだわっていたものを手放したら、本当に大切なものと繋がったんだよ。』

彼女には、「いつか」と夢見続けていたことがありました。私も、彼女を、ずっとずっと応援していました。だから、「夢が潰えてしまいました」との報告を受けたときは、正直、とてもこころが痛かった。

それでも。彼女のメールの底の方からは、不思議な落ち着きと、あたたかな空気が漂ってくるのでした。それは、きっと、いま、この瞬間、そのまま、彼女を包み込んでいるあたたかさなのだろうな……。そんなことを思いました。

メールは、このように締めくくられていました。

『私は、とても、幸せです。』

彼女の用いる「幸せ」ということばからは、一切の力みや強がりが感じられませんでした。それはきっと、彼女を包んでいる「幸せ」が、「取りに行った」タイプのものではないからだろう、と思うのです。

彼女は、ただ、「ずっとずっとそこにあった幸せ」に気づいたのでしょう。それこそが「本当に大切なもの」だと、こころの底からの気づきを得たのでしょう。

「手放す」のには、大変な勇気が必要だったことでしょう。悔しかったし、悲しかったことでしょう。本当は、決して、諦めたくなんかなかったことでしょう。

それでも、それらの葛藤を乗り越えて、思いっきり開かれた彼女の手のひらには、いま、とてつもなく大きな“ギフト”が載せられているのです。それは、彼女自身、予想すらしなかったことなのではないでしょうか。

「放てば手に満てり」

とても大切なことを教えてもらったような気がしました。

道元さんと、彼女に、こころからの「ありがとう」を。そして、彼女のこれからの人生に、こころからの祝福を。

「ほぼ週刊彼岸寺門前だより」2015年5月10日発行号より転載)